作家インタビュー

日本テレビ系アニメーション『ガラスの仮面』主題歌
「ガラスの仮面」芦部真梨子(1984年4月21日発売/東芝EMI)

売野雅勇

(歌詞の元原稿を見たとたんに)あちゃー(笑)モトゲン!タイトルがデカいね(微笑)。阿久悠さんの生原稿を見せて頂いたことがあって、阿久さんのは(詞の形式が)縦書きで、1曲の歌詞に表紙が付いてるんです。表紙に曲名が書いてあって、周りを黒く塗ってあったり、絵が描いてあったりするんです。タイトルがやたら目立つようになっていて。ぼくはそれが出来ないので、(「ガラスの仮面」の原稿を見ながら)タイトルだけマジックインキで書いていた(笑)。この頃はまだ原稿の書き方のスタイルが完成していなくて、きれいには書いてあるんですけど、後からカリグラフィーペンというモノを見つけて、もうちょっと芸術的に(笑)書くようになるんです。
『ガラスの仮面』は、原作の漫画を何冊かもらって、全部読むんです。それで得たモチーフやインスピレーションを、ストーリーにあった形の言葉にしていくという書き方ですね。これは歌入れには行ってないですね。

日本テレビ系ドラマ『誇りの報酬』エンディング・テーマ
「想い出のクリフサイド・ホテル」中村雅俊
(1986年5月21日発売/日本コロムビア)

この頃はヨットをやって、海が好きになっちゃって、海が日常っていう生活だったんです。葉山、横須賀、油壺っていうのは車で走り馴れていて、稲垣潤一さんの「夏のクラクション」もそこからできていった作品です。そういう当時の実生活とは別に、大学生の頃にアメフトをやっていて、そのちょっと遊び人の風情のある先輩たちの会話の中によく出てくる「クリフサイド」という言葉に、ぼくはシビレてしまった記憶があったんです。大人の匂いを嗅いだのでしょうね。粋でセクシーでいい響きだなあって思っていたのを思い出して書いた(微笑)。クリフサイドは、元々ホテルの名前ではなくて、横浜にあるナイトクラブで、ロングドレスを着たホステスの人たちがいて、ビッグバンドが鳴っているダンスフロアがあるグランドキャバレーと言われる大人の遊び場です。そのクリフサイドに憧れていた学生の自分の記憶があり、いつか歌詞に使いたいと思っていたんです。

中村雅俊さんの新曲の打合せの時に、あのクリフサイドを使って、ちょっとゾクゾクするような、甘くて切ない禁断のラブソングを書こうと閃いたんだ。この時は詞先で、作曲家によっていろいろタイプがあるので、例えばこの作曲の鈴木キサブローさんだったら、どういう球を投げたらいいのかなって考えて、この時は歌い出し(の文字数、音符数)を5555にしたんです。7575にする時もありますけど。もちろん、自分で歌いながら書きます(笑)。誰にも聴かせたことはないけどね。余談だけど、3連でやってもらいたい時は、3333で書く時もあるんだけど、「津軽海峡・冬景色」の歌い出しみたいにね。でも、期待した3連ではなくて違うメロディーがついて来て、ちょっと残念なケースもあるんですけど(笑)。

油壺のリゾートマンションに泊まったことがあるのだけど、そこは窓から見降ろすとハーバーのヤードに陸上げされたヨットがいっぱい並んでいるのが見えて、夕暮れには風に吹かれて帆を張るワイアーがマストを叩く切ない音が夕闇に響くんですね。あの夕闇のハーバーを舞台にリゾートで出逢う男と女のひと夏の恋の歌にしようかと思いついた。記憶はインスピレーションのバックヤードだからね。クリフサイド・ホテルは、ですから、もちろん架空のホテルです。

「想い出のクリフサイド・ホテル」中村雅俊

「想い出のクリフサイド・ホテル」
写真提供:日本コロムビア

売野雅勇

日本航空ハワイキャンペーン’86イメージソング
「最後のHoly Night」杉山清貴(1986年11月6日発売/バップ)

「最後のHoly Night」杉山清貴

「最後のHoly Night」
写真提供:バップ

この歌詞を書いた時は、プロデューサーの藤田浩一さんととても長いブレイン・ストーミングのような打ち合わせがあって、3時間くらい話した気がします。それを持って帰って書いたわけですが、もう藤田さんかぼくかどちらが言ったのかは忘れてしまいましたけど、「最後のイヴはいちばん好きな人と過ごしたい」というキーフレーズが最終的にできて、ふたりともこれは行けるぞという手応えを感じて、これを発展させてストーリーを語ろうとそういうことになりました。普段こんな打ち合わせはあまりやりませんが、藤田さんが杉山さんのメロディを聴いて、何か強烈なものがあるけど言葉にならないもどかしさを抱えてたんじゃないかな。だから、たどり着くのに時間がかかったのだと思います。

歌詞の最大のポイントとしては、結婚は結婚、恋愛は恋愛と切り離して考えるような女性を歌詞に登場させて、そういう、一般的には反感を買うような感覚で生きている女性にも、これは自分の歌だと思えるような作品をあえてつくろうという狙いがありました。これはブレストがないと書けなかった作品ですね。プロデューサーの考えとしては、一般的なクリスマス・ソングという枠からはみ出した、ちょっと危険なクリスマス・ソングにしたかったのだと思います。

普通なら街の片隅で一生懸命生きている人達のささやかなクリスマスのエピソードが共感される歌になるわけですが、そこをちょっと外してる、ちょっとズラしたギミックがあるんですね。でも、そこに気づいた人はあまりいないかもしれないですね(笑)。杉山清貴さんのあの美しい声で歌われると、この歌の主人公の女性こそが最も祝福されるべきだと思わせられてしまう。

日本テレビ系ドラマ『もっとあぶない刑事』挿入歌
「TRASH」柴田恭兵(1988年11月16日発売/フォーライフ)

これはスタジオに歌入れに行った時の記憶、印象なんですけど、柴田さん本人が歌詞をあまり気に入ってないような感じがしたんです。後日、「すごく良い歌になった」っていう感想を聞いてほっとしたんだけど…・。あ、いま思い出しましたけど、歌い終わった後に、一生懸命歌った照れもあるんだと思うけど「こんなもんでいい?」って、ボーカル・ブースから出てくるなり僕に向かってそう言ってましたね。それから、歌が完成した時に、「今度、食事かゴルフでも行きましょう」って誘って頂いたのを覚えてますね。

ぼくは本当はこういうワイルドな歌詞が得意なんです。「いつも負け札ばかり引かされ  屑の烙印 押されて生きてきた」、こういうフレーズが好きでいくらでも書けますって感じなんだ。あと、この歌詞にちりばめられた動詞の命令形ね。“叫び続けろ”とか“やたら媚びるな”“浮かれて笑うな”とかね、すごい数の命令文だね(笑)。
「TRASH」ってタイトルも歌詞を書く前に最初からできていたね。普段考えていることを書くスタイルの歌詞だね。いまでも、自分の歌みたいな感じがします。

作詞家の出発点がシャネルズだったから、京浜工業地帯のティーン・エイジャーの青春、土曜だけがオレたちの生き甲斐みたいな、そういう歌が自分にすごくあってると思っていて、そういう人たちの生き方に真実を感じる感性が生まれつきそなわっているのかな。言葉を変えると、不良っぽい歌が好きなんですね。シティポップスと呼ばれた歌をたくさん書きましたから、お洒落とかというイメージでとらえられがちだけどね(笑)。どちらも自分だから、ウェストサイド物語のアップタウンもダウンタウンもどちら側に住んでも違和感がないのが特徴かな(笑)。

本当はリーゼントにしたかったくらいロカビリーが好きで、あまり気づいてくれる人は少ないんだけど(笑)だからチェッカーズもすごく書きやすかったですね。そうそう、リーゼントと柴田恭兵さんといえば、ぼくは東京キッド・ブラザーズの舞台も何度も観に行っていて、ファンだった時期もありました。ロックンロール・ミュージカル!すごく楽しい舞台だった。小劇場時代ですけど、柴田恭兵さんはスターオーラでキラキラしてましたね。

「TRASH」柴田恭兵

「TRASH」
写真提供:フォーライフ ミュージックエンタテイメント

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